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ぽつりと呟いた自身の


ぽつりと呟いた自身の声が酷く寂しさを孕んでおり、それに気付いた土方は苦笑いを浮かべる。

 


 江戸へ隊士徴募に行くのとでは話の毛色がまるで違う。yaz避孕藥 生きて帰れる保証など何処にもないのだ。近藤とは一蓮托生として生きるつもりの土方は、"俺も着いていく"と言いたかった。しかし喉まで出かかったその言葉は吐き出されることなく、の底まで飲み込まれる。局長不在の上、副長まで不在にすることは出来ないのだ。かと言って、この伊東に隊を任せるのは不安が過ぎる。となればやはり着いていくことは諦めざるを得なかった。

 


 


「土方さん、それで良いんですかッ!?」

 


 沖田は非難めいた口調で土方を見る。

 


「仕方ねえだろう……。この人がこうと決めたら曲げねえことは総司もよく知っている筈だぜ」

 


 そう言われると、返す言葉が無かった。この道に生きると決めた以上、皆死ぬ覚悟は出来ている。だが、わざわざ敵地に赴いてそれを早める必要は無いのではないかと沖田は拳を握った。

 


 そしてその場に平伏する。突然の行動に近藤は驚きの表情で沖田を見遣った。

 


「近藤先生……。それなら、どうか私も連れて行って下さい。私に御身を守らせて欲しいです」

 


 もはや止められないのであれば、せめて自分が直接守りたい。そう思いながら、縋るように頭を下げる。

 


「総司……」

 


 困惑を含んだ優しい声が頭上から聞こえた。困らせていることは承知の上である。きっと優しい先生のことだから、良いと言ってくれる。言って欲しい。

 


 


「済まない。気持ちは嬉しいんだが、お前を連れていくことは出来ないんだ……」

 


 だが、降ってきたのは拒絶の言葉だった。沖田は顔を上げると、目を見開く。「なッ……。何故ですか!」

 


 納得出来ないと沖田は顔を横に振った。だが、近藤は優しく笑みながら、その肩に手を置く。

 


「総司、お前には天然理心流の五代目を継いでもらうつもりだ」

 


 その言葉に沖田は勿論のこと、土方や井上も驚きの表情になった。しん、と場が静まる。

 


 沖田は若くして免許皆伝し、も務めている。故にその素質としては誰よりもあった。しかし普通は当主の子どもなり、養子なりが継ぐのが順当である。近藤の嫡子は女子のたま一人であるため、これは継げないのは仕方がない。だが、たまが婿取りをするか、もしくは京に来てから養子として迎えた、七番組組長・谷三十郎の弟である"近藤周平"を後任とするのが流れの筈だった。

 


 沖田も土方も、近藤は周平に継がせるものだと思っていた。ところが、いざ蓋を開けてみると近藤が選んだのは沖田だった。

 


 


「もうその旨は文に めてある。後は江戸へ送るだけだ」

 


 沖田はパクパクと口を動かす。何かを言いたいのに、衝撃で言葉を失っていた。

 


「うんうん、総司なら安心だよォ」

 


 井上は破顔しながら感じ入るように頷く。

 


「俺も総司なら賛成だ。けどよ、周平はどうする。谷さんが黙っちゃいねえぜ。ギャンギャン騒ぎ出すのが目に見えるな」

 


 近藤周平という男は武家の出らしく学があり気立ても良いのだが、剣術の才能には恵まれなかったようで、何をどう教え込んでもパッとしなかった。自分の身を守るので精一杯、と云った評価である。新撰組の晴れ舞台だった池田屋でも、近藤隊にて切り込んだのだが臆してしまい、おこぼれに預る程度の戦果しか上げられなかったのだ。

 


 それらを総合的に考慮すると、どう考えても沖田に軍配が上がる。

 


 痛いところをつかれたように、近藤は眉を下げた。

 


「周平は養子としては良い子なのだが、ありゃ剣術は駄目だ。谷さんとて、弟の器量は分かっているだろう。俺は、総司が良い」

 


 敬愛する近藤に、ここまでハッキリと認められたことに沖田は思わず瞳を潤ませる。