のなか、相棒は俊春の横にしれっとお座りをしたかと思うと、体をぴたりとくっつけるようにして横になってしまった。
そうか。犬も猫も、避孕藥 飯をやるによく慣れる。相棒とて、犬にちがいない。
毎食手間暇をかけてつくり、やさしい言葉をそえて食事を提供する「兼定のシェフ」こと俊春に尻尾をふり、魂をうり、心臓を捧げるのも当然だろう。
「ちゃうちゃう。そんなんちゃうて。ちっともわかってへんなぁ」
相棒が睨みつけてきた。しかも、「OK グーOル、相棒の気持ちをおしえて」、とスマートスピーカーによびかけたみたいに、俊春が相棒の内心をぺらぺらとさえずるではないか。
そうか。飯やり云々の問題ではないのか?
やはり、として、新撰組を率い、転戦しつつ会津へ向かわれます。そうであったな、主計?」
「ええ?あ、はい。そうです、たま」
相棒を想いすぎていて、俊冬の問いをスルーしそうになった。
「副長。あなたは、局長と別れたのち、史実どおりにされる意思はございますか?史実がかわる、かわらぬは別にして、あなたご自身の意思を確認しているのです」
俊冬の意図がわからない。いったい、なにをいたいのか。あるいは、なにをしりたいのか。
「島田先生。あなたは、これよりさき、主計同様副長の支えとなる方です。ごまかしは抜きで、真実をしっておいていただきたい。主計がのことをしっているのは、かれが未来からやってきたからです」
俊冬の告白は、あまりにも突拍子もないものである。当然であろう。おれだったら、すぐには理解できない。告げられた内容を何度も反芻し、脳のウエルニッケ領域に浸透させ、そこでやっとわかりかけるだろう。それから、信じることができず、「それは嘘だ!」とか、「マジか?」とか、否定的かつ懐疑的な言葉を叫ぶだろう。
「なるほど」
島田は、あっさりとおおきくうなずいた。あまりにもあっさりすぎて、かえってこっちのほうが「はあ?」って声をあげてしまう。
そういえば、こっちにきた当初、副長はもちろんのこと、局長、井上、永倉、原田、斎藤、沖田、野村は、フツーに受け入れてくれた。後日、藤堂もさして疑うことなく受け入れていた。
なんだろう。過去の時代というのは、未来から人間がやってくるのがフツーのことなのだろうか。「信長O奏曲」みたいに、主人公の高校生のみならず、斎藤道三が元警官だったり、松永久秀が元がプロ野球選手だったり、と複数の未来人がタイムスリップしているのだろうか。「信長Oシェフ」だって、複数人がタイムスリップしている。
それとも、おれたちのいた時代のように、タイムスリップなどSFの世界だ、フィクションだ、という概念がないのだろうか。
おれも、未来人を探すべきなのだろうか?いいや、もしかすると、敵方に未来人がいたりして・・・。
どんどん妄想チック、創作チックになってゆく。
それこそ、これで手記でも書けるのではないのか?「実録!新撰組」、「リアル幕末巡り」、「新撰組とゆく京と江戸と蝦夷の旅」なーんて。「それで?おれの意思をしって、どうするつもりなんだ、たま?」
散歩係をクビになってからの光明をみいだしている間に、副長が俊冬に尋ねている。
木箱に浅く座って脚を組む姿は、「イケメンモデル土方歳三」である。
その隣に座っている、島田のことは・・・。ふれないでおこう。
「さきほど蟻通先生に申しましたとおり、ご命令さえあれば、われらはいますぐにでも香川隊に参り・・・。すぐに大軍監のかわりはまいりましょうが、しばしのときは稼げます」
そこで、かれは口をつぐむ。
つまり、暗殺しまくるということか。
「あなたのご命令があれば・・・」
ぽつりと強調する。
「無論、うまくやります。敵は、暗殺されたとはけっしてもらしませぬ。士気にかかわりますゆえ。局長の耳朶には、敵の動きがおかしいと入れればよいだけのこと。もっとも、ばれるでしょうが。なれど、殺ってしまえば、もうどうにもできませぬ。局長には、腹をくくっていただき、ともに会津にまいっていただくしかありませぬ。まさか、敵の動きがおかしいことに、局長が投降したり、ましてや腹をきるなどというのもおかしな話ですゆえ」
そこでまただまりこむ。このおいしすぎるストーリーについて、副長に考慮させるかのように。
「さきほど、わたしが島田先生に主計の正体を告げたのは、あなたが、いまのわたしの